エージェントに向く仕事・向かない仕事
廃止判断から学んだ適性の見極め基準
2026/4/12
作って、使って、捨てた
blog-topics-updater というエージェントを作った。
役割はシンプルで、ブログのネタ候補リスト(blog-topics-master.md)を自動更新するというものだ。毎週手動で更新するのが手間だったから、エージェントに任せようと思った。
結果、半月で廃止した。
正確に言うと、実際に使ったのは2回だけだ。2回試して、「これはエージェントにやらせる仕事じゃない」と判断して、迷わず消した。
「使えなかった」わけじゃない。向かない仕事をさせていた、それだけだ。
何が起きたか
エージェントが出してきたネタのレベルが低かった。
2万字ほどのインサイト情報を渡して、ネタを出させた。エージェントが返してきたのは7個。「この構造で書くべき」という断定型の提案で、どう刺さるかという視点がなかった。
同じ情報を普通のチャットに渡したら、20個出てきた。「今こういうトレンドがあるからここに刺さりそう」「こういう方向で書きたいんだけどどうですか」という提案型のやり取りができて、会話を重ねるごとにネタの精度が上 がっていった。
そこで気づいた。ネタ出しの本質は、会話を繰り返しながら精度を上げていくプロセスにある。エージェントはターミナルで動かしているから、そのやり取り自体がしにくい。構造的に向いていない環境だった。
「これなら最初から普通のClaudeに話しかけた方が早い」と思った瞬間、廃止を決めた。
廃止判断の根拠
設計の問題だった。
このエージェントは、ローカルにある既存の記事やメモを読んで、そこからネタを抽出する設計になっていた。外部の情報を収集する仕組みも、対話を重ねながら方向性を探るプロセスも、設計に入っていなかった。結果、手持ち の情報だけで完結しようとして、ネタがしょぼくなった。
そもそもの話として、ネタ出しという作業は「世間の今はどこか」「この読者にはどう刺さるか」「この切り口は新鮮か」といった判断を積み重ねる仕事だ。発散的な対話を通じて方向性を探り、外部の文脈と照らし合わせながら 絞り込んでいく。こういう作業は、エージェントより普通のチャットの方がずっと向いている。その都度その都度進め方が変わる作業を設計に組み込んで、エージェントとして管理・運用するコストは、得られるメリットに見合わ ない。
一方で、エージェントが本当に強いのは別のところだ。ローカルのファイルを読み込んで、明確な設計に沿って処理して、決まった形式で提案を出す。そういう仕事だ。
自分が毎日使っているタスク管理エージェントがある。ローカルのタスクファイルを読んで、進捗を更新して、期限が近づいたらせっつかれる。「これ、もう期限切れてますよ」と毎回言ってくる。うっとうしいと思うこともある が、仕事は確実に前に進む。これは設計と仕事がちゃんと合っている。
整理するとこうなる。
| エージェントが向く | 普通のチャットが向く | |
|---|---|---|
| 情報源 | 複数のローカルファイルを読んで処理 | 必要な外部知識・文脈が不明瞭な処理 |
| 作業の性質 | 設計が明確な定型処理 | 発散的な対話・方向性を探る不定形処理 |
| やり取りの形 | 明確な設計があってこそ機能する | 不確定なことを会話を通じて積み上げていく |
逆に言うと、エージェントはその設計をきちんと作り込むコストが必要だ。シンプルな作業であればエージェントにする必要はない。設計コストに見合うだけの、繰り返しと量がある仕事に向けるべきだと思っている。
コービーが5人いたら最強か?
適性の話をするとき、いつもスポーツのことを考える。
ラグビーでもバスケでも、体格も役割も違う選手たちがそれぞれのポジションに立つことで、チームとして機能する。
じゃあ、コービー・ブライアントが5人いたら最強のチームになるか?
……なりそうな気もする。正直なところ、コービーが5人いたら普通に強い気がしてならない。
ただ、現実のバスケはそうじゃない。センターがいなければリバウンドが取れない。ポイントガードがいなければゲームが組み立てられない。コービーがどれだけ優れていても、5人全員が同じプレースタイルでは機能しないシーン が必ず出てくる。
エージェントも同じだ。「エージェントにやらせれば全部解決」でも、「エージェントは信用できない」でもなく、適性のある仕事に、適性のあるツールを立たせる。それだけの話だ。
廃止は失敗ではなく、適性の発見だ
blog-topics-updater を消したことに、後悔はない。むしろそうなるだろうなと思いながら設計をした。
作ってみたから、向かないと分かった。2回試したから、確信が持てた。廃止を決めたから、次に何をエージェントに任せるべきかが明確になった。
この失敗から学び、エージェントを作る前に自分に問うべき質問は、たった一つだ。
「明確な設計を作り込めるか?」 「そしてその設計コストに見合うだけの仕事か?」
これにYESなら、エージェントに任せる価値がある。設計が曖昧なまま動かしても、精度は上がらない。シンプルな作業なら普通のチャットで十分だ。